〜パラスとケンタウロス〜ボッティチェリ〜個人的な解釈

渋谷にて開催中のボッティチェリ展もあとひと月になりました。 今回残念ながら来ていないのですが、ボッティチェリの絵の中でも個人的に好きな絵の一つをご紹介します。

パラスとケンタウロス


武器を携えた女神がケンタウロスの髪をつかんでいる。女神に巻き付いた草はオリーブで、勝利と平和を象徴する。 一般的な解釈として半人半獣のケンタウロスは、
暴力や肉欲など、人間の獣性を象徴します。
 理性による獣性の制御を表わしているという主題は、花嫁の貞潔に結びつくことから、注文主が結婚の際に注文したと言われています。 


ロレンツォ・デ・メディチ
注文者のロレンツォ・デ・メディチという人はライバル家を失脚させ、巨額の赤字に喘いでいた家業の銀行業を立て直しながら 政治的に表に出ない様にしながらも実質的な君主となっていきます。イタリア内諸国との勢力均衡を図りながらローマ教皇庁との結びつきを強める一方で、芸術の庇護者として数多くの芸術家を支援し古典研究のためギリシャからも学者を呼び、私塾を作ります。 そしてフィレンツェにルネサンスの栄華を作り上げていきました。その業績から"偉大なるロレンツォ"と呼ばれたほどの人物です。

さて、絵の中でモチーフとなっている弓を携えたケンタウロスはギリシャ神話に登場します。 この弓を持つケンタウロスは女神アルテミスから狩猟を学んだという"ケイローン"を指しています。 一般に野蛮で粗暴な一族の中で、"ケイローン"は例外的な存在であり知恵の象徴であり医学に通じた賢者とされています。 一方の"パラス"は"ミネルバ"のギリシャ語読みです。本来"ミネルバ"はローマ神話の最も重要な3人の神々の一人であり、 学問と戦
メディチ家の紋章
赤い丸は丸薬を表します
いの他、医師と医療を司る知恵の女神です。そして注文主であるメディチ家の"メディチ"とは日本語では"薬"のことです。

つまりこの絵の主題は古いメディチを新しいメディチが倒すという図式になっています。 女神の武器は一般的に剣よりも価値が低いとされ、身分の低い歩兵の武器でした。追放状態にあったロレンツォが 君主にまで上り詰めたことも表したと考えられます。
まさに学問を愛した"改革者ロレンツォ"の結婚という新しい門出にふさわしいモチーフと言えます。

ボッティチェリはそもそもこうした寓意を多用する画家ではありますが、 現代人から見てもっとも驚くべきは作者ボッティチェリ、注文者ロレンツォ、 そしてサロンに招かれた客達がこうした古典の知識を持ってこの絵を理解していたという事だと思います。

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